はかなきは金銭・・・
ふつう役職は組織の目的追及を効率化ならしめ、責任の所在、支配服従関係、組織階層、あるいは秩序の維持のため設けられるものです。
しかし、その制度が企業社会にあまねく定着したので、いまはむしろ企業内における位階勲等、宮中序列的な意味合いのほうが大きいものです。
世間もそういう受け取り方しかしないので、現役時代の役職が、軍隊の位階と同じく、退職後もそれが序列の基準をなすことになります。
「それにしても会社の机と名刺がなくなったときの淋しさ。
まさかA社の元部長の名刺をもって歩くわけにもいかんからね・・・」
A社を退職してそのまま悠々自適の生活に入った定年部長氏は、そうかこちながらも、実感としては女房に見られたくない書類などの保管場所が家のなかにはない不便さを訴えていました。
しかも口先だけは悠々自適と言いながら、まだ58歳では残りの人生に間のもたせようがなく、毎日の生活に不安よりも焦りが積っていくようでした。
日本のサラリーマンが最も嫌がるのは、収入や生活よりも、働く場所がなくなること・・・
すなわち失業です。
なまじっかA社のような一流大企業の部長という前歴があると、かえって、いいかげんなところには再就職できないマイナスもでてきます。